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CFRPの今後の世界市場規模は3兆5000億円!小林ダイヤが特許を取得したCFRP加工用階段型ドリルについて。
技術コラム | 2022.08.05
令和3年6月7日に弊社の製品が新たに特許取得となりました。
それは階段型ダイヤドリル(特許取得の名称は「ドリル」)です。
本件の特許の目的は、CFRP薄板の穴あけ加工の際に発生するムシレやバリを抑制し、仕上がり面をより良好にすることです。
ダイヤドリルの中心から外周に向けて、3段の刃を形成し、階段状にしたドリルです。
実際にCFRPを加工した動画を撮影しましたので、まずは階段型ダイヤドリルとはどういう工具なのか、ご覧になってみてください。
CFRPという素材は軽量、高強度、高剛性のほか、疲労特性に優れ、電磁波遮断、錆びないという特徴があります。
鉄の4分の1、アルミの2分の1の軽さでありながら、鉄の10倍以上の強度を誇る非常に優秀な素材です。
現在では、旅客機の機体や、自動車のボンネット、バックドア、プロペラシャフト、橋梁の建築材料、自転車のフレーム、ゴルフクラブのシャフト、釣り具のシャフト・リール、など、身近な製品から航空宇宙分野まで幅広い用途で製品が製造されています。
炭素繊維協会によると、自動車部品にCFRPを使用すると素材の製造、組み立て、走行、廃棄までの自動車1台当たりのライフサイクルCO2排出量を16%削減できるとの試算が出ております。
また、ボディやフレームなどが約30%軽量化され、燃費性能も20%以上向上するといった調査結果も出ているそうです。
製造コストが高いため、少し前までは高価格帯の自動車やカスタムパーツなどで使用されていましたが、現在はプリウスPHVのバックドアの骨格に採用されるなど、CFRPの製造方法の改善や生産性の向上によるコストダウンなどにより、一般量産車への導入も加速していくとみられています。
非常に優秀で用途も幅広いCFRPですが、実は切削工具で加工するという点ではクセ者です。
というのも、CFRPは炭素繊維に樹脂を含侵させた後、硬化させたものを何層にも重ねて成型した複合材のため、ドリルやエンドミルなどを使用し加工した場合、ムシレやバリ・デラミネーション(表層・層間剥離)が発生してしまい、加工が難しいとされています。
また、加工中の工具の摩耗も激しく、加工穴の品質を保ちながら、安定的な加工数を確保することも難しいとされています。
そこで、小林ダイヤでは穴あけ加工時のバリ、デラミネーションを抑え、なおかつ加工数も確保できるドリルの形状開発に取り組み、今回特許取得となった階段型にする形状を開発しました。
刃先の形状に変更を加えた3タイプの階段型ダイヤドリルを開発し、それぞれのタイプが穴あけ加工においてどのような結果になるのか、加工テストを行いました。
刃先の形状の違いは下記の図をご覧ください。
そして比較のため、特許を取得した弊社の階段型ダイヤドリル(3タイプ)と同じ寸法の標準超硬工具でCFRPを穴あけ加工した場合の侵入側のバリ高さと抜け側のバリ高さ、真円度を測定した資料を掲載させていただきます。
CFRP材の板(158mm×152mm×厚さ2mm)の5か所に各工具で穴あけ加工を行い、それぞれの侵入側バリ高さ、抜け側のバリ高さ、真円度を測定しました。
標準超硬ドリル、階段型ドリル(3タイプ)は全て刃先Φ10.5、全長130mmの2枚刃の仕様で比較しました。
階段型ダイヤドリルはドリルの最先端から1段目(中心刃)、2段目を中間刃、3段目を外周刃とし、2段目、3段目の角度に変化をつけた3タイプ、それに加え、標準超硬ドリルを足した計4本の工具で穴あけ加工を行いました。
加工条件等
加工機:立てフライス盤
加工条件: 回転数 4000rpm
送り 160mm/min
3タイプとも標準超硬ドリルに比べてバリ高さ、真円度ともに大幅に良好な結果になりました。
3タイプの中でも、特に侵入側に強いタイプと抜け側に強いタイプ、どちらも平均的によかったタイプに分かれました。
CFRP板1枚を穴あけ加工する場合、穴あけ加工の際に表裏を選択し、綺麗にしたい面がバリ高さが低くなるタイプを選択いただければ、所望の面をより綺麗に仕上げることが出来ます。
CFRPの世界市場においては2020年の市場規模で1兆2464億円でしたが、2035年の予想では3兆4958億円と2.8倍もの規模になると予測されています。
カーボンニュートラルを世界が推し進める中で、既存の素材の代替としてCFRPを使用することや、CFRPを活用した新たな製品が生み出されていくことが想定されます。
そんな中、小林ダイヤがCFRP加工工具において特許製品を生み出せたことは非常に大きな意味を持っており、本製品がより多くのお客様の加工のお役に立てることを楽しみにしております。
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